今はもういない人のことに思いをはせる

40年来の友人であるHさんのお父さんが亡くなって、もう20年になる。
私は彼女のお父さんには一度しか会ったことがなく、話題にのぼったのも、ほんの2,3回くらいしかないのだけれど、今でも彼女から聞いた話をなぜか思い出してしまうのだ。

 Hさんは看護婦さんで、高校を卒業してお互い違う道へ進んだため、私は見習い期間中だった頃の彼女とは疎遠になっていた期間があった。
その当時お礼奉公という形で働いていた病院に、彼女のお父さんがガンのために入院することとなったのだそうだ。

 職場でもあり、彼女は献身的にお父さんの治療の手助けをしていたと聞く。
時々病室を覗いては声もかけていたが、やつれていく姿を見るのはさぞ辛かったことだろうと思う。

ある日、「気休めかもしれないけど」と、あめ玉をお父さんに渡した時、
「そうか、ありがとう」とお父さんは微笑んで受け取り、その数日後、亡くなったそうだった。

 彼女は亡くなった父のいた病室を清掃に訪れ、最期に引き出しを空けたときに思わず涙したという。
最期にあげた、あのあめ玉の一つが、その引き出しにぽつんと入っていたからだった。

なんだかね・・あれはちょっと・・きちゃったね・」と、笑って言ってたけれど、その心境をおもんばかり、私もぐっとくるものがあった。
どんな些細なものであっても、亡くなった人のことを思い出させるものは愛おしい。